残業代の計算方法
残業代は、一般的に法定労働時間を超えて働いた時間に対して支払われる追加の賃金のことです。多くの人が残業代について知ってはいるものの、正しい計算方法を理解している方は少ない様です。ここでは、基本的な残業代の計算方法とその仕組みについて、できるだけわかりやすく解説します。
基本の計算式
まず、残業代は通常の給与とは別に計算され、法定時間外労働に対する割増賃金が加算されます。残業代の計算式は次の通りです。
残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間
この式において、「1時間あたりの賃金」は、基準内賃金から1時間の給与を算出したものであり、通常は月給を労働時間で割って求めます。
ここで「基準内賃金」という、普通に暮らしてたらまず聞かない単語が出てきたので、開設しておきます。残業代を計算するにあたって、残業代の基礎となる賃金に含めなけらばならない賃金と、含め無くても良い賃金の2種類に分けられます。以下に含め無くても良い賃金についてあげます。
- 家族⼿当
- 通勤⼿当
- 別居⼿当
- ⼦⼥教育⼿当
- 住宅⼿当
- 臨時に⽀払われた賃⾦
- 1か⽉を超える期間ごとに⽀払われる賃金(賞与等)
これらの手当は任意恩恵的な性格が強く、労働の対償性が低いため割増賃金に含め無くても良い賃金とされています。従って扶養手当(家族手当)・交通費(通勤手当)等多少名称が違っていても、同等の性格の手当であれば含め無くても良い賃金となります。ただし、例え家族手当の名称で支給していたとしても、家族の人数等に関わらず一律で支給されているような場合は、含め無くても良い賃金にはなりません。またあくまでも「含め無くても良い」賃金であるため、あなたの勤める会社に就業規則が無ければ、未払い残業代等の請求においてこれらの賃金を含めて請求することができます。
例えば基本給20万円・役職手当5万円・資格手当5万円・家族手当1万円、1か月の所定労働時間が160時間の場合、1時間あたりの賃金は以下のように計算されます。
1時間あたりの賃金 = 300,000円 ÷ 160時間 = 1,875円
この1,875円が、通常勤務時の1時間あたりの賃金です。
参考:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?」(PDF)
割増率について
次に、「割増率」について説明します。労働基準法では、時間外労働、深夜労働、休日労働に対して、それぞれ異なる割増率が適用されます。
- 時間外労働(法定労働時間を超える勤務): 基本的に25%の割増率
- 深夜労働(22時から5時までの勤務): 25%の割増率
- 休日労働(法定休日の勤務): 35%の割増率
例えば、時間外労働が20時間あった場合の残業代を計算すると、1時間あたりの賃金に25%の割増率を掛けて求めることができます。
残業代 = 1,875円 × 1.25(25%の割増率) × 20時間 = 46,875円
つまり、20時間の残業に対して46,875円の残業代が支払われることになります。
残業代の計算例
具体的な例で残業代を計算してみましょう。仮に月給30万円、所定労働時間160時間で、月に20時間の時間外労働と10時間の深夜労働、5時間の休日労働があったとします。
- 時間外労働の残業代:
残業代 = 1,875円 × 1.25 × 20時間 = 46,875円
- 深夜労働の残業代:
深夜労働の残業代 = 1,875円 × 1.25 × 10時間 = 23,437.5円
- 休日労働の残業代:
休日労働の残業代 = 1,875円 × 1.35 × 5時間 = 12,656.25円
これらの合計は次の通りです。
合計の残業代 = 46,875円 + 23,437.5円 + 12,656.25円 = 82,968円
この月の残業代は82,968円となります。
残業代の計算における注意点
残業代を計算する際には、いくつかのポイントに注意が必要です。
- 基準内賃金の正確な把握: 残業代の計算には基本給が基準となりますが、住宅手当や通勤手当など、特定の手当は計算の対象外となる場合があります。労働契約書や就業規則を確認し、何が基準内賃金に含まれるかをしっかり把握しておきましょう。
- 割増率の適用時間: 割増賃金は時間帯によって異なります。特に、22時以降の深夜労働や休日の労働では通常の残業代よりも高い割増率が適用されるため、その計算を忘れないようにしましょう。
- みなし残業代の存在: 一部の企業では、あらかじめ一定時間分の残業代を「みなし残業代」として月給に含める場合があります。みなし残業代を超えた労働時間については、別途残業代が支払われるべきです。自分がどのような契約になっているのかを確認し、適切な支払いを受けているかをチェックしましょう。
みなし残業代が適切に支払われていない場合
みなし残業代が有効になるには、一定の条件があります(下記、過去記事参照)。
仮に不適切なみなし残業代等の支払い方をしていた場合は、みなし残業代の皮を被った、ただの手当なので基準内賃金に含めて計算する事ができます。
そのためには繰り返しになりますが、辞める前に雇用契約書や就業規則で労働条件をしっかりと確認する事が重要です。
まとめ
残業代等の計算は、一見複雑に感じるかもしれませんが、基準内賃金の考え方と割増率を理解すれば自分でも算出できるようになります。しっかりと自分の働いた時間と支払われるべき金額を確認し、不当な支払い漏れがないよう注意しましょう。もし疑問や不明な点がある場合は、会社の人事部門や労働基準監督署に相談することも大切です。
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