みなし残業代について

みなし残業代とは?

みなし残業代とは、実際に残業をしていなくても、あらかじめ一定時間分の残業代が固定的に支給される制度です。一見すると、残業をしてもしなくても一定の残業代が支払われるため、労働者にとってありがたい仕組みに見えるかもしれません。しかし、現実はそれほど単純ではなく、みなし残業代には多くの労働者が不満を抱く原因が潜んでいます。

労働者の視点から見たみなし残業代の問題点

 残業がみなしの時間を超えてしまった場合が顕著な問題点です。例えば、月20時間分のみなし残業代が給与に含まれていても、実際に25時間・30時間、もしくはそれ以上の残業をしても、会社側が追加の残業代を支払わないケースが多くあります。もちろん、労働者にとって一定のメリットも存在しており、特に残業が少ない月でも、固定で残業代が支払われるため、給与が安定するという安心感はあります。毎月の給与に変動がないという点では、家計のやりくりがしやすいというメリットは無視できません。
 しかし、こうした表面的なメリットを超えて、みなし残業代が持つ「未払い残業代の温床となる」と言うデメリットは深刻です。また残業代未払い以外のデメリットとしては「みなし残業代だから、残業は当然だ」という考え方を会社から押しつけられる点です。例えば、20時間分の残業代が含まれていると、使用者は「最低でもその分は働かさなければ」と考え、定時で帰る従業員に対して嫌悪感を抱くことさえあり、労働者に対して過剰な責任感や負担感の押し付け・無理な労働を強いる原因となります。また実際の働き方にそぐわないみなし残業代の設定がされている場合、労働者にとってそれは負担以外の何物でもありません。

みなし残業代の仕組み

みなし残業代はあらかじめ、「何時間分の残業代が給与に含まれているか」を雇用契約書や就業規則等で明確にする必要があります。例えば月20時間の残業がみなし残業として設定されている場合、従業員はその20時間分の残業代を月給の一部として受け取ることができます。

具体的な運用例

  • 設定された時間の残業内で働く場合
    実際に残業が少なかったり、全く残業をしていなかったとしても、みなし残業代は毎月固定で支給。
  • 設定された時間を超えて残業する場合
    みなし残業時間を超えた部分については、労働基準法に基づき、追加の残業代を支払う。

例えば月20時間のみなし残業代が設定されている場合に、25時間の残業を行った場合、5時間分の残業代が別途支払われる必要があります。

みなし残業代のメリットとデメリット

みなし残業代には、会社と労働者双方にメリットとデメリットが存在します。以下にそれぞれの観点から整理します。

メリット

  • 会社側
    • 一定時間以下であれば残業代の計算をする必要がなくなり、給与計算が簡便化される。
    • 給与額が一定であるため、コストを予測しやすい。
    • 労働者のモチベーションを維持するために、一定額の残業代を常に支払うことで、賃金の安定性を確保できる。
  • 労働者側
    • 実際に残業が少なくても、設定された残業代が固定で支払われるため、月給が安定する。

デメリット

  • 企業側
    • 実際の残業時間がみなし残業代で想定している時間と比べて少ない場合でも、設定されたみなし残業代を支払う必要があるため基本的にコストが高くなる。
    • 適切な管理がされない場合、未払い残業代が積み重なって行く可能性がある。
  • 労働者側
    • 実際にみなし残業時間を超える残業をしても、その分の残業代が支払われないリスクがある。
    • 使用者にとってみなし残業代を支払っている=その分残業させなければ損と言う考えになり、いたずらに残業させる原因となりえる。
    • 総支給額は多いが、実際はみなし残業代が多くを占め、時給計算をすると想像より低い場合がある。

適切なみなし残業代の運用条件

みなし残業代制度が適切に運用されるためには、いくつかの条件があります。会社側がこれを守っていない場合、法的に問題となる可能性があり、みなし残業代等の請求の余地が発生します。

  1. みなし残業代の明確な表示
    労働契約書や就業規則に、みなし残業時間やその賃金が明確に示されている必要があります。つまり労働者自身が、自分のみなし残業代は何時間分の残業代に該当するのか容易に判断できる状態でなければ当該みなし残業代は無効と判断されるケースがあります。
  2. 実際の労働時間との比較
    実際に働いた時間がみなし残業時間を超える場合、その超過分に対して追加の残業代が支払われる必要があります。みなし残業時間を超える労働をしているにもかかわらず、追加の支払いがない場合、それは「未払い残業代」として請求する余地が発生します。
  3. 固定残業代を基本給等と分けること
    みなし残業代は基本給とは別に支払われる必要があり、これが曖昧な場合、「未払い残業代」として請求する余地が発生します。

まとめ

みなし残業代制度は、労働時間と賃金をシンプルにするために有効な仕組みですが、適切に運用されなければ労働者にとって不利益につながる可能性があります。労働者は、自分の給与明細や雇用契約書を確認し、みなし残業時間や支払われるべき残業代が正当であるかを常に意識し、支払われていない場合は賃金債権の有効期間内に請求する必要がある事を覚えておく必要があります。

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